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前ページ確率世界のヴァリエール シュレディンガーは周りを見回した。 何も見えない。 目が開いているのかすら定かでない。 まるで突然に盲いたかの様な、明るくも暗くも無い灰色の世界。 そこに自分の輪郭だけがおぼろげに浮かんでいる。 否。 そう感じたものを見えていると思い込んでいるだけなのかもしれない。 宙に浮いているのか、どこかに立っているのか、それすら判らない。 光も無い。 闇も無い。 時間も距離も、天地すらも、無い。 指定座標の範囲外。 テクスチャの向こう側。 何処でも無い場所。 存在することを許されなかったものたちの逝き着く果て。 確率世界の箱の外、『虚無の地平』。 虚無の穴に吸い込まれ、「追放」されたものたちの逝き着く果て。 シュレディンガーは自分の隣に巨大な質量の塊を感じる。 レコン・キスタ旗艦、レキシントン号。 もはや黒煙をたなびかせる事も無く、ただここにある。 このフネはもう、生きる事も死ぬ事も無く、ただここに在り続ける。 周囲に意識を凝らす。 「近く」に、レキシントン号以外にも様々な存在を感じる。 この「近さ」は、無論距離ではあり得ない。 ここに来た時間の「近さ」、でもない。 しいて言えば、物と物との関係性の近さか。 だがそれもじきに意味を失う。 ハルケギニア世界に開いた穴は、もうおそらく閉じていた。 しかしその穴は閉じるまでに多くのものをここに「追放」していた。 彼らはレキシントン号と同様、生きても居らず、死んでも居ない。 ただ延々と、ただ永遠と、この世界を漂い続けるのだろう。 その彼らの中を彷徨い思う。 自分はいつから存在しているのか。 思い出を手繰っても思い出せない。 ただきっと、自分はここで生まれたのだろう。 この『虚無の地平』で。 そして彼に、「少佐」に導かれこの姿形を得た。 彼に「シュレディンガー」として定義付けられた。 唯一つの目的のために。 あの吸血鬼を打ち倒すためだけに。 そして目的を果たし、そして目的を失い。 それでもまだ「シュレディンガー」として存在している。 それが自己観測するシュレディンガーの猫。 自分という存在。 この世界にも、どの世界にも、自分と同じ存在なんて居なかった。 世界で、世界中で、そして世界の外で、たった一つの存在。 それで良いと思っていた。 それが当たり前だと思っていた。 あの桃髪の少女に会うまでは。 「ルイズ、、、」 小さくつぶやく。 自分以外の全てが同じ色をした世界の中で。 でも、彼女だけが違って見えた。 「少佐」も、「大尉」も、あの「吸血鬼」も。 深く関わり、それでも自分と彼らとは違っていた。 でも、彼女だけは。 その時。 不意に、彼方に灯りがともる。 光も闇も無い筈のこの世界で、光と闇とが分かたれていく。 空間が定義付けられ、距離が生まれる。 時間がシュレディンガーの中を流れ始める。 「あれは、、、」 全てが灰色の世界で、シュレディンガーの体だけが色付いていく。 全てが意味を失う世界で、彼だけに存在する意味が与えられる。 「、、、あの光は」 その光に呼応するように、シュレディンガーの右手が ゆっくりと、柔らかく、しかし確かに脈打ち光をまとう。 コントラクト・サーヴァントの契約の証。 ワルドに胸を貫かれ、首を撥ねられた時に 消えて失せた筈の、ヴィンダールヴのルーン。 主人と使い魔とを結ぶ、絆。 「ルイズ!」 もう一度、彼女の名を呼び。 シュレディンガーは彼方の光に向かって進んだ。 。。 ゚○゚ 虚無の穴は既に閉じ、 しかし空は今なお闇に包まれていた。 二つの月は太陽を静かに飲み込み、 最後の光のしずくさえ天空から消える。 勝者の凱歌も、敗者の怨嗟も無いままに 争う者の姿はもうここにはなかった。 その闇に包まれた世界から、赤黒いものがにじみ出て来る。 戦場に倒れた者達の魂が、命が、そして死が。 血の河が。 墜落し炎を上げる戦艦から。 潰れ果てたトーチカから。 焼かれ黒煙を昇らせる集落から。 積み重なった鎧の山から。 それらはこぼれ、束ねられ、幾筋もの血流となって 戦場の一点に集まっていく。 倒れた少女の下へと。 『死の河』が。 ゆっくりとうねり、集まっていく。 自らの主を迎え入れるために。 自らを存在せしめるために。 寄り集まった血の流れが幾重もの円を描いて少女を囲み、 這い伸びたその端が少女の体に触れようとしたその時。 その先端が、グシャリと折れて曲がり潰れた。 「彼女は、ボクのだ」 全てが闇に閉ざされた世界の中に、灯りがともる。 少女の体は光に包まれ、死の河が力を失い流れ散っていく。 その光の中には、少女と、少女の使い魔がいた。 シュレディンガーはしゃがみ込むと、主人の頬に 光をまとう右手で優しく触れた。 そこには、奇跡があった。 ルイズは、生きていた。 彼女を乗せた大輪の花のように、桃色の髪が地面に大きく広がる。 彫刻の様に美しく整ったその顔は透き通るように青白く、 煤と土ぼこりで汚れてはいたが、傷一つ付いていなかった。 破れ千切れまとわり付いて残骸と化した制服のすそからは 細くしなやかな右手が伸び、その手には今だ杖が握られていた。 その顔に宿った意思と、その手に握られた誇りと。 それがルイズに残された全てだった。 ルイズが、ゆっくりと目を開く。 その瞳がシュレディンガーを見つけ、 その唇が柔らかく微笑む。 (シュレ、わたし、やったわ) 「うん、見てた。 ずっと見てた」 その薄い胸が空気を吸い込む事はもはや無く、 その喉が鈴を振るような声を響かせる事も無い。 吐息の代わりに唇からは血のしずくが一筋あふれ、 しかし彼女の言葉は全てシュレディンガーに届いていた。 (わたしを守るって、言ったクセに) 言葉とはうらはらに、いたずらっぽく微笑むルイズに シュレディンガーは全てを包むような優しい笑みを返す。 「守るよ。 ルイズはボクが守る。 いままでも。 これからも」 シュレディンガーがそっとルイズを拾い上げる。 ルイズはュレディンガーのいざなうままに その唇にそっと手を触れた。 短く、激しいその生涯の最期にもう一度だけ、 ルイズは自身の使い魔に口付けたいと思った。 ============================== ルイズの頬を風が撫でる。 「ここ、は?」 とろけていた意識が覚醒していく。 ゆっくりと体を起こす。 、、、体?! 驚いて自分の体をまさぐる。 胸を触る、腹を触る、おしりを触る、足を触る。 体だけじゃない、来ている服にさえどこにも 傷一つ、汚れ一つ付いていない。 「気が付いた?」 「シュレ?! ここって、、」 周りを見回す。 まだ空は暗いままだ。 しかし場所はタルブでもラ・ロシェールでもない。 シュレディンガーと何度も訪れた学院の屋根の上だった。 「、、、もしかして、ここってあの世?」 「いや、ルイズは死んでないよ」 シュレディンガーがルイズの正面に座り込んだまま 静かに告げる。 「これがボクの本当の力。 本当の姿。 ボクはどこにでもいて、どこにもいない。 ボクがボクを認識する限り、どこにでもいれる。 たとえ、体を失ったとしても」 「そ、それってつまり、死なない、、って事?」 いや、死ねない、のか。 自分はさっき確かに死を体験した。 それは全てのものを支配する、唯一の理のはずだ。 過去の記憶の断片が脳内を巡る。 フーケのゴーレムと戦った時あの時にも。 シュレディンガーが単独任務から帰った時も。 消えるはずの無いルーンが消え失せていた。 キュルケの言葉を思い出す。 シュレディンガーを「死神」と呼んでいた事。 記憶のピースが音を立て繋がっていく。 全ての生者を支配する、唯一の理。 死があるからこそ、生がある。 そして、その逆も。 ならば、目の前の者は何者なのか。 そして、私も。 私は死んだのか? 死んではいないのか? それとももう、死んでしまっているのか? 「怖い?」 「わっ!」 突然に差し出された手を反射的に避ける。 宙に浮いた手がびくりと固まる。 「あ、ごめ、、」 言いかけて、言葉を止める。 光の無い世界の中でも、ルイズには感じ取れた。 シュレディンガーは、怯えていた。 今までに一度も見せた事のない、 願うような、請うような、その眼差し。 どれだけの生と死を繰り返してきたのだろう。 この世界で、全ての世界でただ一人、 どれだけの孤独の中にいたのだろう。 不意に気付く。 あの時の私と、同じだ。 それが当たり前だと思っていた。 魔法を使えなかった、「ゼロ」と呼ばれ続けた日々。 しかし、初めて魔法が成功したあの時の喜びと。 その証である使い魔が眼前から消え失せた時の絶望と。 あの時の私と、同じなんだ。 シュレディンガーにとって私は、永い永い 孤独の中で出会った、ただ一つの証なんだ。 自分が一人きりではないという事の。 数多の世界の中でただ一人の、自分と等しい存在。 心が軋みを上げる。 シュレディンガーが消え失せたあの夜に感じた、 全てが崩れるような絶望、乾き切るような無力。 多分、シュレディンガーも今、それを感じている。 その感情の意味すらもわからずに。 死と生と、神と罰と背信と、そして永遠と無間。 様々な概念が頭をよぎるが、今のルイズにとっては 全てが愚にも付かないものでしかなかった。 ルイズは迷い無くその手を伸ばすと、 シュレディンガーが逃げようとするのも構わずに その手を両手で握りしめ引き寄せる。 「シュレ! こ、怖いかって聞かれれば そりゃ、ビ、ビックリは、したけどね。 でも、もしアンタがどうしても 一緒に居て欲しいって言うんなら そ、そうね。 一緒に居てあげない事もないわ、シュレ」 シュレディンガーは驚いたように目を丸め、 そして笑った、ぽろぽろと涙をこぼしながら。 「っはは、何ソレ! 変な言い方」 「い、良いでしょ! どうなのよ」 ルイズの手を握り返し、シュレディンガーは 涙をためた目で微笑み、静かに頷いた。 「うん。 一緒に居て、ルイズ」 日食は終わりを告げ。 天空から差しこぼれるダイヤモンドリングの光が 一つに重なった二人の影を照らし出した。 ============================== ラ・ロシェールの平原にも、陽光が再び戻っていく。 墜落した戦艦の残骸が黒煙を上げてくすぶるが、 もはやどこにも争っているものは居ない。 ルイズが居た丘の上、そこに一人の少女が立っていた。 純白のスーツに純白のコートを羽織り、同じく 純白の毛皮の帽子からは黒髪がこぼれる。 忌々しげに太陽を見上げ、諦めたように小さく哂う。 「まあいい。 今回はあ奴に譲ってやるとするか。 なに、機会はあるとも。 いくらでも、永遠に」 黒髪が蝙蝠の翼のように形を変える。 「さあて、遊びも飽いた。 ぼちぼち帰るとするか。 あの青髭の兄弟の元への」 。。 ゚○゚ トリステインの南限、オルレアン湖岸。 湖からの湿った風が青い髪をなでていく。 遠く湖の向こうを眺める男に、ローブをまとった女性が影のように近づく。 その目は血のように赤い光を放っている。 「終わったか」 「はい。 下は、件の『虚無の魔女』がレコン・キスタ艦隊の 半数以上を沈め、残る兵も皆降伏した様です。 上は、シェフィールド様が全てを平らげてしまいましたわ」 「そうか」 赤い目をした女性が懐から布包みを出し、それを開く。 その中には二つの指輪があった。 始祖の秘宝、『風のルビー』と『水のルビー』。 男はそれを受け取り一瞥すると、それきり興味を無くした様に それを無造作に羽織ったコートのポケットに突っ込む。 「お前の主人には何と報告するつもりだ?」 「ご兄弟でございましょう? 貴方様からお伝え下さいまし」 そう告げるとローブの女性は微笑んで影の中に溶けて消える。 (もうすこし「やればできる子」かとも思ったが。 ふん、クロムウェル、所詮はこの程度か) 眉を上げて薄く笑う。 (まあいい。 いずれあの浮島にはまだ異世界の異教徒たちがいる。 ロマリアの狂信者どもが、あの絶滅主義者どもが 主の消えたアルビオンを放っては置くまい。 どちらに転ぶにせよ、まだまだ楽しめそうだ) 雲の彼方、見えるはずの無い白の大陸に目を向ける。 空を眺めるその男の後ろが急に騒がしくなる。 「あっ、あっ、兄者ぁああ~~~!!」 ズザザーッッ! 同じく青髪に青髭の男が息を切らしてやってくる。 肩にはマントを羽織り、頭上には王冠を頂いているが 肩で息をするその姿には威厳のかけらも無い。 「せっ、せっ、戦争はどーなった?! 私の可愛いシャルロットちゃんは無事か?! くっそう、トリステインのジジイども、 こっちが丁寧に協力を申し出てやってるのに 返事も返さんとは、ナメてんのか?! このまま攻め込んでって滅ぼしてやろうか! お前も蝋人形にしてやろうか!!」 「落ち着きなさい、陛下。 シャルロット様はご無事です。 陛下は王女殿下の事となると途端に 分別がおなくなりになられる。 陛下がその様に軽率に振舞われては 民も安んじて居れませぬ」 「そ、そうか、無事か、無事ならいいんだ。 それにしてもジョゼフ、怒っているな! 兄上は怒ると口調がやたら丁寧になる」 頭を抱えため息を一つ吐くと、ジョゼフは弟へと向き直る。 「シャルル、私を「兄上」と呼ぶなと何度言ったら判る。 国に頭は二つも要らぬ。 私を簒奪者にでもするつもりか?」 「弟が兄を敬ってなにが悪い! それに簒奪者になるくらいなら先王の指名を断らねば 良かっただけの話でしょうに。 始めて見たよ、あんな人間。 そんなにその「研究」とやらが大事なのか?」 「大事も小事も無い、俺に王は務まらぬ。 それだけの話だ」 シャルルがやれやれと頭を振る。 「全く兄上はあの使い魔が来てから変わってしまわれた。 兄上だけではない、シャルロットも変わってしまった」 「向こうでは偽名を使っているのだったな。 確か、バサラと言ったか?」 「何その超強そうな名前! 無双かよ!! タバサだよタバサ! そもそもはあれだ、あの兄上の使い魔が 可愛い子には旅をさせよだの 可愛い子には七尾旅人だのと言わなければ こんなに気を揉む事もなかったのに」 愚痴を垂れるシャルルにジョゼフは深々と頭を下げて見せる。 「その通りで御座いますとも、陛下。 あまねく世界の厄災凶事は全て我が使い魔の仕業で御座います。 火竜山脈の火竜どもが暴れだしたのも アルビオンが長々と続く内乱になったのも レコン・キスタがトリステインに攻め入ったのも 全部ウチのシェフィールドが原因で御座いますとも」 ジョゼフの言葉にシャルルがあわてて弁明する。 「そ、そーは言ってないだろうに。 ヒドいな兄上。 そういえばそのシェフィールドはどうしてるんだ? あの大蝙蝠、いや、黒猫、あー、黒トカゲだったか? あの姿をコロコロと変える使い魔はまた「研究」とやらなのかい? 大体何の研究なんだ、少しくらいは教えてくれても良いだろうに」 「内容か」 ジョゼフは軽く笑い、空を見上げる。 「この世界の全てを手に入れる方法だ」 「はっはっは、そいつは素晴らしい。 手に入ったら半分くれ、ジョゼフ」 シャルルは快活に笑うと後ろを振り返る。 「では諸君、楽しい楽しいショーも ひとまずお開きだ。 そろそろ帰ろうじゃないか、 愛しき我が家(リュティス)へ。 クラヴィル、全艦回頭用意だ、急げよ」 「はっ!」 ガリア国王シャルルはその頂いた王冠に相応しく 威風堂々たるしぐさで王都に向かって腕をかざした。 。。 ゚○゚ 「フェヴィス!」 衛生兵の運ぶ担架にアンリエッタが駆け寄る。 「良かった! 良くぞ無事で居てくれました」 涙ぐみながら包帯の巻かれたその手を取る。 「そんな、姫殿下。 私なんぞのために勿体無い」 上体を起こしフェヴィスが恐縮する。 ラ・ロシェールの平原。 レコン・キスタ残党の艦は全て地に下ろされ、 兵たちも武装を解かれそれぞれに集められている。 抵抗を試みるものは誰一人として居ない。 皆、自分たちの軍隊を滅ぼした、そして世界を滅ぼしかけた 虚無の力に抵抗する気力すら失っていた。 虚無の穴に近かった山肌が山林ごと丸く削り取られ地肌を晒し、 崩落の起こらぬよう、数十人の土メイジが処理に追われている。 レコン・キスタ艦隊の何隻かは全てが飲み込まれる前に 虚無の穴が閉じたため、艦の一部がこちら側に残されていた。 それらは全て墜落し、あちこちに残骸の山を築いていたが、 虚無の穴により削り取られた断面はつややかな光沢を放っている。 太陽は頂点からいくらか西に傾き、雲間から届く柔らかな午後の日差しが 平原に広がる戦いの名残りを照らし出す。 「何を勿体無がる事がある! 有難く頂戴しておけ」 聞き覚えのある声にフェヴィスは身を強張らせる。 「こ、これはマザリーニ枢機卿! それに、オスマン殿も!」 「良い良い、怪我人が無理をせんでもよかろうて」 「面目ない事で。 それよりも枢機卿、虚無の魔女殿は、 ミス・ヴァリエールはどこです? この勝利は彼女の力の賜物です。 ぜひとも一言礼を言わねば」 その言葉に、アンリエッタは物言わず目を伏せる。 そのしぐさにフェヴィスが動揺する。 「そんな、まさか」 「あの時に、私は聞いたのです、ルイズの声を」 諦観を帯びた目でアンリエッタが微笑む。 「別れを告げる彼女の声を」 「そんな!」 「兵を総動員して目下捜索しておるがな」 マザリーニが懐に手を入れる。 「見つかったのは、これだけだ」 『始祖の祈祷書』を取り出して見せた。 「ルイズーーーッ!!!」 キュルケの呼び声が響く。 制服も長く美しい赤髪も煤と煙に汚れ、地面を掘り返した土で 爪の間も真っ黒に汚れているが、それを気にする余裕も無い。 「どこにいるのー!! でてらっしゃーーい!!!」 魔法の力を使い果たし、腕に負った火傷の痛みで今にも倒れそうな その体を無理やりに引きずり、声の限りに叫ぶ。 その横には彼女の使い魔、フレイムが寄り添う。 フレイムの目を借り、瓦礫の中、土くれの中に人間の熱を探す。 そうして埋もれていた幾人かを助け出したが、そこに 目指す少女の姿は無かった。 キュルケが瓦礫の横にしゃがむ人影を見つけ、駆け寄る。 「ギーシュ!」 彼は地面から頭を出した彼の使い魔、ヴェルダンデに 頬を寄せ、懸命に何かを聞いているようだった。 「どう?!」 キュルケの問いかけに、ギーシュは静かに首を振る。 「彼の仲間達にも手伝ってもらっているが。 彼女の気配も、鼓動も、、」 キュルケが奥歯を食いしばり、その目にじわりと涙がにじむ。 力を失い、膝から落ちそうになった体が細い手に支えられる。 「駄目。」 短く力強い、絶望を許さぬ声。 「タバサ、、」 自分の体を支える小さな友人に、キュルケが詫びる様に応える。 その支えが急に消え、キュルケは地面にしりもちを付く。 「ちょ、タバサ?!」 抗議の声を上げるキュルケをタバサが片手で制す。 その顔は真っ直ぐに空へと向けられ、その耳は彼女にだけ聞こえる 彼女の使い魔の声を遠くに聞いていた。 喜びに震え叫ぶシルフィードの声を。 「あれ。」 タバサの指が空の彼方を指差す。 それにつられギーシュとキュルケも顔を上げる。 いつもは無表情なその顔に歓喜の笑みを浮かべ、タバサは叫んだ。 「あれ!!」 竜騎兵達が大きな弧を描き空を飛び回る。 それを目にした者達が我れ先にと集まってくる。 フェヴィス達が戦い抜いた、錬金で作られたトーチカの残骸。 ルイズが消えたその場所に。 ごうっっ。 音を立てて風が巻く。 走り寄っていた皆の足が空を蹴り、体が宙に浮く。 それを気にする者も無く、彼らの視線が上空の一点に集まる。 竜騎兵達が遠巻きに周りを回る、その中心に。 「ははっ、いやいや、何ともはや」 「ほんっとうに、人騒がせなんだから」 「照れちゃ駄目ですよ、お姉さまったら」 「良かった、ルイズさん、、、」 「おお、ルイズ! おーい!」 「魔女殿、それに使い魔殿も健在か」 「おお、シュレ坊や! シュレ坊や!」 「仲直りなのね、姉さま!」 「めでたし。」 「ふふ、やるじゃない、バカルイズったら」 見上げる皆の中央。 人々の輪の中に、二人が降り立つ。 その二人の前で、涙に目を潤ませ微笑むアンリエッタに ルイズは片膝をつき、頭を垂れる。 「ご命令通り、ただいま戻って参りました」 「お帰りなさい、ルイズ」 ルイズは顔を上げ、アンリエッタに微笑みを返す。 「もう私はここに居ます。 もう私はどこにも居ないし どこにでも居れる。 だからここに居ます。 私は私の意志でここに居るのです。 アンリエッタ様のおそばに。 これからも、ずっと」 「そう。 そうなのですね。 あなたもシュレディンガーさんと 同じになったのですね、ルイズ」 「はい」 優しく問うアンリエッタに、静かに応える。 「あらー、本当に同じねぇ」 シリアスなシーンを台無しにするなとでも言うように 睨みつけるルイズに、どこ吹く風とキュルケが笑顔を返す。 「ねえ、ギーシュ、タバサ。 使い魔お披露目式典の時みたいじゃない? なーによ、ルイズ。 アンタさっきから真面目な顔して カッコ良く決めてるつもりなんでしょうけど、 嬉しくてはしゃいじゃってるの丸分かりよ? ピコピコ動いちゃってさー、 もうほーんと、可愛いったら!!」 クスクスと笑うキュルケの視線の行く先に気付き、 ルイズの顔がみるみる紅潮する。 「シュレ」 ルイズがシュレディンガーに向き直る。 「もしかして、、、生えてる?」 「うん。 にょっきり」 「おお、あれが魔女殿の例の「ツノ」か」 「本当だ、何とまあ可愛らしい」 「猫耳の使い魔殿とお揃いだな」 「何というか、、、来るものがあるな」 「『虚無の魔女』殿という呼び名もいささか硬苦しい。 どうだろう、『ネコミミの魔女』殿と呼んで差し上げては?」 「異議なし! 異議なし!」 「成程、ネコミミか!」 「『ネコミミの魔女』、万歳!!」 「万歳! 万歳!」 「ネコミミ万歳!!」 プルプルと羞恥に肩を震わせるルイズをよそに、 周囲のモブ兵たちが好き勝手に盛り上がる。 「それよりルイズちゃん、朝の約束、覚えてるわよね?」 目を閉じて鼻息荒く口づけを迫るキュルケに向かって マリコルヌの髪を引っつかみ顔を押し付けると、 上がる悲鳴も気にせずにルイズはスカートをたくし上げ杖を抜く。 「シュレディンガー?」 ルイズが青筋を立てつつにこやかに振り向く。 「ちょ、ルルル、ルイズさん? ボクのせいじゃなくない?!」 「いいえ、一から十まであなたのせいよ?」 満面の笑顔でエア・ハンマーのスペルを唱えると、 なぜか杖が青い稲妻を帯びてバチバチと強く輝く。 「ご主人様に恥をかかせる様な使い魔には、 きちんと躾をしなくちゃね」 にっこり。 「ぼ、暴力反対!」 後ずさるシュレディンガーの巻き添えを恐れ、 ギャラリーが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。 「ルイズ。」 「何?! タバサ!」 「左手は添えるだけ。」 力強く頷くと、杖を思い切り振りかぶる。 「こんの、バカ猫ーーっ!!」 午後の夏空に雷鳴が轟いた。 。。 ゚○゚ 確率世界のヴァリエール - Cats in a Box - ∧,,∧ (≧∇≦)ギャフン END 前ページ確率世界のヴァリエール
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前ページ次ページ確率世界のヴァリエール 浮遊大陸アルビオンの南端、軍港ロサイス郊外の古城。 昼なお暗いホールの中央に、白いコートの男が一人立っていた。 血の付いたナイフを払いコートの内に仕舞うと、ポケットから紙箱を取り出す。 「、、、ん」 軽く眉を寄せるとくしゃりと紙箱を握り潰してポケットに戻す。 ふ、と男が視線を前に投げる。 男の床の前に黒い光がこぼれ方陣を作ると、黒尽くめの男が這い出て来た。 「ハァーイ♪、おひさ死ブリDeath」 陰気に笑う男が掲げたタバコの箱からその一本を口で受け取ると、 ルーク・バレンタインはライターを取り出して火を付けた。 間久部(マクベ)が小脇に抱えている書類の束に目をやりつつ、煙を吐き出す。 「今度は何だ、賛美歌でも教えるか?」 「それも良いが、そりゃまた今度。 金属の鋳造練成加工技術と、、それにチョイと精度の高いマスケット銃ですよ。 魔法抜きの技術レベルにあったブツをチョイスするのが中々に大変でしてねぇ」 「まるでエデンの蛇だな」 「何せ私ゃホラ、十三課<イスカリオテ>ですからネ。 汚れ仕事は我等が本懐」 傷の奥の目がにんまりと嗤う。 「今週末の虚無の曜日までに、ここの密偵共だけは潰して置きたかったんですがー、 イヤハヤ、相変わらずの見事なお手前。 これで「停戦会議」も滞りなく」 足元の暗がりに転がるいくつもの死体を見回す。 「それじゃ、いつもの如く血の一滴も残さぬよう、頼みマスよ。 あーそうそう、我等が聖女様たちへ何か伝言は?」 「テファには、夕飯までに戻ると言っておいてくれ。 黒い方には、今度あったら殺すと伝えろ」 ニヤケ顔で手を振りつつ間久部が魔法陣の中に消えていく。 床に残されたタバコの箱を拾い上げ、ルークがつぶやく。 「フン、、、悪魔め」 善人ごっこ、オーク狩り、麗しの姫を守る騎士、、すべては余興のはずだった。 この世界の実情を把握し、新しい獲物を見付けるまでの、仮の住まい、隠れ蓑。 ひとときの戯れ、すべてはそのはずだった。 (俺たちにとっちゃあ人殺しができて生き血がすすれれば なんでもかまわねーや) 頭の中に懐かしい声が蘇る。 「ックク、確かにな、、、」 べちゃり。 と、床に広がる血だまりに手をひたす。 ぞろり。 と、屠った者たちの感情が、記憶が、意識がルークの中に流れ込む。 オーク鬼やトロル鬼とは比べ物にならぬ程の、思念の熱量、思考の奔流。 驚愕。敵意。侮蔑。殺意。激怒。後悔。嘆願。渇望。絶望。諦念。狂気。 悔恨、無念、怨恨、嫌悪、遺恨怨念懇願激憤呪詛自嘲憎悪憎悪憎悪憎悪 憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪 憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪 憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎悪憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎 憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎にくにくくにくににくにnnnnkknnnnn - テ ィ フ ァ ニ ア - 混濁した意識が強引に引き戻される。 目を開ける。 床に転がる自分の右手がどろりと溶けている。 違う、違う。 目を閉じ、意識を集中し、在るべき形を思い出す。 形を取り戻した手を床に突き、ゆっくりと立ち上がる。 たかが千にも満たぬ心を、命を、魂を取り込んだくらいで。 己を失ってたまるか。 名も無き化け物になぞ、なってたまるか。 俺は、俺だ。俺は、俺だ。俺は、俺だ。俺は俺だ俺は俺だ俺は俺だ。 ぎしりと歯を噛み、ルークは笑う。 「俺は、、、俺だ!」 確率世界のヴァリエール - Cats in a Box - 第十二話 「そそそ、それじゃあ、行って来るから!」 緊張で顔を赤らめたルイズをキュルケが部屋の前で見送る。 「はいはい、がんばってらっしゃいね~♪」 「ががが、がんばるって何をよ! 魔法訓練の息抜きにちょっと遠出しようって誘って下さっただけで ワルド様とは別に頑張るとか頑張らないとかじゃないから!」 「えー、それなら僕も行きたいなー。 あのグリフォンにも乗ってみたかったしー」 「だ~め。 シュレちゃんは今日は私とお留守番」 寝起きのベビードールのままでシュレディンガーの頭を抱え込む。 「ちぇー」 「わがまま言わないの。 せっかくだからコッチも朝食にしましょ。 タバサ食堂に呼んできて」 「はーい」 ============================== シュレディンガーが消えた後、ルイズはキュルケに向き直る。 「じゃ、シュレの事頼むわね。 夏休み中でヒマだからって私のいない間に あの子にちょっかい出さないでよ」 「出さないわよあのコには」 呆れ顔で即答するキュルケに、ルイズはそれはそれでと不満に思う。 「そういやキュルケ、年がら年中サカってるくせに シュレにだけは手ぇ出そうとしないわね」 「あらアンタ、あのコの飼い主なのに気付いてないの? 危険な香りのする殿方ってのも魅力的だけどね、 あのコの中に居るのは「死神」よ。 アタシはそこまで命知らずじゃないの」 「、、、?」 (やっぱり制服は無かったかしら、もうちょっと地味目でも夏物の、、) 考えながら中庭を歩くルイズの元へ一人の少女が駆けてきた。 「はいっ、ルイズさん! 頼まれていたサンドイッチとワイン、 それに今朝一緒に作った、焼きたてのクックベリーパイですよ!」 「あ、ありがと、シエスタ」 「ついにワルド様とデートですね。 頑張ってくださいね、ルイズさん!」 シエスタが屈託無くはしゃぐ。 「そそそ、そういうのじゃ、、、!」 顔を火照らせてどもるルイズの手を取り、 シエスタは真剣な面持ちでルイズを見つめる。 「ルイズさん、女は度胸です!」 「それじゃあ、ルイズさん」 走り去ろうとするシエスタに、おずおずとルイズが声をかける。 「そ、その、シエスタ」 「はい? 何でしょう、ルイズさん」 「あ、、、ありがと」 「っふふ、はいっ!」 「うわー、青春ねぇ、ギーシュ」 「そうですねぇ、お姉さま」 カフェテラスでその様子を眺めていたモンモランシーとケティが ギーシュを横目にうっとりとつぶやく。 読んでいた本から目を上げ、ギーシュが一つあくびをする。 「ふわあ、ん。 あのルイズにもやっと春到来か。 いやいや、めでたいね」 「お、おま、お待たせしました!!」 「やあ、おはようルイズ」 門の外に立っていたワルドが優しく微笑みかける。 「いや、こちらも今着いたところさ。 済まないね、まだ夏休みに入ったばかりだと言うのに」 「い、いえそんな、ぜんっぜんヒマです!」 「そうか、それは良かった」 親しげに首を寄せてくるグリフォンの頭をなでながら ルイズへにっこりと笑う。 「訓練ばかりじゃあ気が詰まると思ってね。 たまには気晴らしに、と思っていたんだが。 喜んで頂けたようで何よりだ」 「い、いえ、こちらこそ 誘って頂いてありがとうございます」 ルイズははにかみながらバスケットを抱え込む。 「おや、それは?」 ワルドがルイズの手に持ったバスケットを覗き込む。 「シエスタに頼んでランチと飲み物を。 それにその、シエスタに習いながらなんですけど、 自分でクックベリーパイを、、作ってみたんです、けど」 「そうか、それは楽しみだ!」 ルイズから受け取ったバスケットを鞍の後ろに積むと そっとルイズの手をとる。 「それではお手を、お姫様。 空中散歩と参りましょう」 。。 ゚○゚ 「うわ、うわ、うわあーー!!」 満面に笑顔を浮かべ、ルイズが思わず声を上げる。 「わあ、ワルド様! 学院がもうあんなに小さく!」 グリフォンの首にしがみつきながら、後ろのワルドを振り返る。 ルイズの体を抱え込むように手綱を取りながら、 ワルドははしゃいだ声を上げるルイズに微笑み返す。 不意に近づいた顔と顔に、ルイズは照れて前へと向き直る。 「気に入ってくれて嬉しいよ、ルイズ。 空を飛ぶのにはもう慣れているんじゃないかと思ったけれど」 「いえ、いっつもは飛ぶんじゃなく落ちるばっかりで」 「ははは、そうかい」 晴れ渡る空の下、二人を乗せたグリフォンが強く羽ばたく。 Vの字に並んで空を舞っていた雁の群れが、 二人を覗き込むようにゆっくりと近づく。 「おや、どうやら僕らの道案内をしてくれるようだ」 「あははっ」 思いがけず現れた道連れに笑い声がこぼれる。 雲をよけ、森を渡り、丘を越えて、川を上る。 グリフォンは風にのり、ゆったりと滑空する。 時折足元を過ぎていく小さな村々。 子供たちが手を振り追いかけてくるのへ ルイズは空から手を振り返す。 やがて遠く連なる山々が近づいた頃、 森の切れ間から小さな湖が現れた。 ふわり、と湖のほとりへ舞い降りる。 瑞々しい青草が羽ばたきになびく。 「わあ、きれい、、、」 夏の高原を渡った涼やかな風が二人に触れる。 「それは良かった」 ワルドがルイズの隣に降り立つ。 「ずいぶんと前にここを見付けてから どうしても一度、この景色を君に見せたくてね」 高く上った陽を受けて湖面がきらめく。 遠く山々は青く澄み、森は深く二人を包む。 小鳥たちは水辺に遊び、楽しげに歌をさえずる。 「少し長く飛んできたけれど、疲れてはいないかい?」 「い、いえ、ぜんぜん平気で、、!」 そう言おうとした時に、ルイズのお腹が可愛らしい音を立てる。 耳まで真っ赤になりながら涙目でルイズが弁明する。 「いや、あのワ、ワルド様! これはその、、、」 (ああ、やっぱり朝に少しでもなにかつまんでおけば、、、) 泣き出しそうなルイズの頭をくしゃくしゃと撫でると ワルドは朗らかに笑う。 「じゃあ、少し早いがお昼にしようか。 実は僕も君の作ってくれたクックベリーパイが 朝からずっと食べたくって仕方がなかったんだ」 「は、はいっ!」 ルイズは涙を拭いてワルドに微笑むと バスケットを鞍の後ろから取り出した。 「ふう、きもちいい、、、」 二人で草の上にごろりと仰向けになる。 ワインで火照ったルイズの頬を湖面からの風が撫でる。 グリフォンもさっきまでは干し肉をかじっていたが 二人に習って昼寝を決め込んでいる。 「また、こうして二人で来たいな」 「、、、はい」 「来年も、再来年も、十年後も、ずっと、、、」 「え、、、」 「、、、ルイズ」 「は、はいっ!」 ルイズが期待と不安にびくりと身をこわばらせる。 腕組みをして空を見上げたまま、ワルドが語りかける。 「実は君に、話しておきたい事があるんだ」 「ななな、なんでしょう!」 「今週の週末、虚無の曜日にアルビオン王国と 貴族派、、神聖アルビオン共和国は停戦会議を行う」 「は、はい、これでやっとアルビオンにも平和が戻ります」 「そうだと良いんだが」 「、、え?」 「まだはっきりとは分らないが、貴族派に不穏な動きがある。 狙いは王党派ではなく、、、 このトリステインだ」 「そ、そんな、なぜ今になって!」 ルイズが体を起こし不安げにワルドを見つめる。 「分からない。 なにか企みがあるのかもしれないし、 もしくは向こうも一枚板ではないのかもしれない」 「、、、ワルド様」 「もしも、このトリステインへ貴族派が直接侵攻する事になれば、 貴族派への密偵であるこの僕も、危うい事となるだろう」 「止めてください! そんな!」 「大丈夫、僕も腕に覚えはある。 そんな事で命を落とすつもりは無いよ。 しかし、もし君が支えてくれるのなら、、、 こんなに心強い事はない」 「、、、」 ワルドが起き上がり、ルイズの手をそっと握る。 「僕と結婚しよう、ルイズ」 「え、、、」 「ずっとほったらかしだった事は謝るよ。 婚約者だなんて言えた義理じゃない事も判っている。 でもルイズ、僕には君が必要なんだ」 「ワルド様、、、! で、でも私、貴族としてもまだ全然で、 それに魔法、魔法だって何一つまともに使えないし!」 「そんな事は無い。 君は他人には無い特別な力を持っている。 僕とて非凡な使い手ではないと自負している。 だからこそ、それがわかる。 例えば、そう、君の使い魔」 「シュレディンガー、のこと?」 ワルドの目が光る。 「彼の持つ力はとても特別なものだ。 誰もが持てる使い魔じゃあない。 そして、それを召喚し使役できる君も それだけの力を持ったメイジなんだよ」 「でも、でも、、、」 「もしかして、あの使い魔君が、、、 君の心の中に居るのかい?」 「ちょ! 違います! アレはただの使い魔っていうかペットです! そういうんじゃなくって!」 「え? いや、ゴメン!」 ぶんぶんと手を振り回し力いっぱい否定するルイズに ワルドは慌てて手をかざし詫びる。 「すまない、僕も急ぎすぎた。 もしかしたら、僕は使い魔君に嫉妬しているのかもしれないな」 「そんな、あの猫耳頭ときたら使い魔のくせに 短気でわがままで甘えん坊で皮肉屋で、それは困った奴なんです!」 「ふふっ、まるで自己紹介を聞いているようだね」 「そんな、酷いですわワルド様!」 「はっはっは、ゴメンゴメン。 でもね、彼と居る時、彼の話をしているときの君は とても自由で素直で可愛らしく見える。 僕の前でももっと見せて欲しいんだ、素顔のままの君を」 「いやだ、ワルド様ってば、、、」 頬を染めてルイズが下を向く。 「僕はね、シュレディンガー君が羨ましい。 彼の力は特別だ、君にとってただ一人の使い魔だ。 この世界のどこへでも、君を連れ去ってしまう」 ワルドはルイズの頬に手を置き、そっと目を合わせる。 「だからこそ、君がどこへ行こうとも平気なように 僕も君にとっての特別なただ一人になりたい。 この世界のすべてから君を守る、姫を守る騎士でありたい。 ルイズ。 僕に君を、守らせてくれ」 「、、、ワルド様」 ざざ、と。 二人の間をぬい、風が草を撫でてゆく。 ワルドがゆっくりと立ち上がる。 「今週末、アルビオン停戦会議に先駆け、ゼロ機関の長として 僕はウェールズ皇太子とお会いする事になっている。 場所はニューカッスル、もちろん君も同席の予定だ」 「、、、」 「そこで、返事を聞かせてほしい」 「、、、はい」 こくり、とルイズは小さく頷いた。 湖を見ながら、ワルドが一つ伸びをする。 「ルイズ、覚えているかい? あの約束をした日、ほら、君はお屋敷の中庭で」 「あの、池に浮かんだ小船?」 ワルドが頷いた。 「君はいつもご両親に怒られたあと、あそこでいじけていたね」 「ほんとにもう、ヘンな事ばかり覚えているんですね」 恥ずかしそうに俯くルイズへ、楽しげに話す。 「そりゃ覚えているさ。 君には嫌な思い出なのかもしれないが、 あの日の約束はずっと、僕にとっての宝物だった」 ワルドがくすりと笑う。 「もう一度あの日のように二人で船に乗りたいと思ってね。 実はこの先に小船を隠しておいたんだ。 とって来るから待っていてくれるかい?」 子供のように駆け出していく姿を目で追いながら ルイズは突然の告白に心の整理を付けかねていた。 ワルドの姿が見えなくなるとぺたりとその場に座り込み、 そばで眠ったままでいるグリフォンの喉をゆっくり撫でた。 「はあ、どうしよう。 私あなたのご主人様にプロポーズされちゃったわよ」 ころころと気持ちよさげな声を上げるグリフォンを見つつも 思わず頬が緩む。 むずむずとした衝動を堪え切れず、草の上に大の字になる。 「うっわー、どーしよ、どーしよ! ワルド様からプロポーズされちゃったわよ私!」 ごろごろと身悶えるルイズの視界に 空から降ってきた何かが映った。 絹を裂くような悲鳴が湖にこだました。 「!!」 杖を抜いて走り出したワルドの耳に 少し遅れてグリフォンの雄たけびが届く。 湖畔の斜面を全力で登り切る。 ルイズの元に戻ったワルドを出迎えたのは、 明らかに野盗と思われる風体の男たちだった。 グリフォンは杭を打たれた投網の中でもがき、 ルイズは野盗の一人に後ろ手に捕まれ、 喉に山刀を据えられている。 「ワルド様、私は構いません! こんな奴ら、やっつけて下さい!」 ルイズの言葉に野盗たちが大声で笑い出す。 「姫様はこうおっしゃっているが どうするよ、色男!」 「魔法で俺たちをふっ飛ばしたあと この娘っこの首だけ持って帰るかね?」 ぐい、と山刀でルイズの顎をあげる。 「物取りの類だろう、金ならくれてやる! 今すぐにルイズを離せ!」 ワルドが杖を突きつけ言い放つ。 「そのおっかねえのを捨てたらな! そら、その杖をこっちに投げてよこしな!」 頭目と思しき男が叫ぶ。 「駄目ですワルド様!」 悲痛な声を上げるルイズの髪をつかみ上げ 男が耳元で怒鳴る。 「おめえは黙ってろってんだ!!」 「、、、」 ワルドが無言で杖を前に放る。 「ワルド様、、!」 ワルドが放り投げた杖を頭目が拾い上げる。 「ほう、こいつぁ良い値がつきそうだ。 おい、予備の杖を持ってないか調べな」 一人を顎でしゃくると、その男がおそるおそる ワルドへ近づき、マントを剥ぎ取ると 持ち物を調べていく。 「こいつもいただきだ」 ワルドのつば広帽を奪い、自分の頭に載せる。 「頭ぁ、他にぶっそうなもんは何にもありやせんぜっ! っとぉ」 振り上げた山刀の柄でワルドの頭を殴りつける。 「ぐあっ!」 「ワ、ワルド様!!」 倒れこむワルドを見て、ルイズが絶叫する。 「貴族か何だか知らねえが威張り散らしやがってよう!」 「おいおい、あんまり乱暴な真似はしてやるなよ、俺らと違って お上品な育ちなんだぜ? 貴族ってなあ」 「だから世の中の厳しさを教えて差し上げてんじゃねーか」 「あっはっは、ちげえねえ!」 男たちがげらげらと笑いながらうずくまるワルドを 交互に蹴りまわす。 「やめなさいよ、あんたたち!! 離せえ、離しなさい!」 涙ながらに叫ぶルイズのマントを捕まえていた男が引きはがす。 「くそ、ルイズには手を出すな!」 ふらふらと起き上がるワルドを一瞥すると、男は ルイズを草むらへ突き飛ばす。 「はあ? てめえじゃあるめえし、 誰がこんな乳臭いガキを相手にするかよ。 、、、大切に抱え込んでたと思ったら、なんだこりゃ」 男はルイズの懐から奪った、古びた革表紙の本をめくる。 「ああっ、『始祖の祈祷書』! 返しなさいよ!」 「学の無えお前にゃ、祈祷書なんぞ無用の長物だろ」 野盗の一人がげらげらと笑う。 「うるせえ、祈祷書どころか何にも書いてねえ、白紙じゃねえか!」 男は祈祷書を投げ捨てるとワルドに駆け寄り蹴りを入れる。 「ちっ、もちっと良いモン持ってねーのかよ!」 ワルドの身に付けていたものとグリフォンの鞍周りを 調べ終わった男が頭目の元へと向かう。 「どーするよ頭ぁ、多少の金貨は持ってたけどよ。 しけてやがる」 「グリフォン殺して嘴取っとけ、薬屋に売れる」 「このハンサムはどうしやす? やっぱ後腐れがねえように」 「いや、契約にゃ、、、!?」 男たちが視線を向けたその先には、右手に杖を握り 始祖の祈祷書を拾い上げたルイズの姿があった。 「ワルドを、、、ワルドを放しなさい!!」 。。 ゚○゚ 「ん? シュレちゃん、どしたの?」 トリステイン魔法学院のカフェテラス。 隣のイスのシュレディンガーをキュルケは怪訝そうに見つめる。 「どうしたんだい? ネコ君。 君の手番だよ」 対面のギーシュがチェス盤をとんとんと叩く。 「ん、、、あれ? 目がヘンだ」 シュレディンガーがこしこしと目をこする。 「疲れちゃいました? お冷でも持ってきましょうか、シュレさん」 シエスタが心配げに顔を覗き込む。 「うわ! なんか見える!」 「はっはっは、チェスに負けそうだからって、、、 え? ネコ君、その手袋の中」 ギーシュの指し示すその先、シュレディンガーの 右手袋の中からは、金色の光が漏れこぼれていた。 「わわ、それってもしかして使い魔のルーンが光ってるの?」 不思議そうな顔で覗き込むモンモランシーに答えず、 シュレディンガーは前を向いたまま呆然とつぶやく。 「右目に、右目だけ何か見える、、、 これって、、ルイズの、視界?」 離れた席で一人本を読んでいたタバサが ぱたりと本を閉じ、顔を上げた。 「ルイズが、危険。」 。。 ゚○゚ 「脅しじゃないわ、離れなさい!!」 野盗たちに杖をかざし睨み付ける。 「おお、おっかねえお嬢ちゃんだ。 だがそんなちびた杖でどうしようってんだ? さっきこのハンサムと話してるのを おっちゃんたち聞いちゃったのよ。 まるで魔法を使えねえんだってえ?」 その言葉に周りの男たちもげらげらと笑う。 「ぐっ、、!」 ルイズは声を詰まらせる。 (こうなったらいつもの様に魔法を失敗させて爆発を!) 小さな杖を握り締めるが、すぐに思い止まり歯噛みをする。 野盗たちの中心にはワルドが倒れていた。 シュレディンガーとアルビオンを飛び回り、 いくつもの船を沈め、いくつもの砦を破壊した。 いつしかこれが自分に与えられた魔法なのではとも思った。 だが。 何度も起こしてきた爆発の中で、ルイズはその特徴を掴んでいた。 強い爆発を起こすには、大きな範囲を巻き添えにする事が必要だ。 短く詠唱をする事で小さな爆発も起こせるが、 それでは人一人弾き飛ばす事さえできない。 野盗たちを吹き飛ばすには、どうしてもワルドを巻き込んでしまう。 じわり、と悔し涙がにじむ。 何が、『虚無の魔女』だ。 使い魔の力を自分の物とはき違え、図に乗っていただけだ。 肝心な時に自分ひとりでは何も出来ない。 アーカードに胸を張り言い放った。 「お前を打ち倒す」、と。 なんて傲慢な、なんて恥知らずな言い草だったろう。 貴族とは名ばかりの、魔法一つ使えぬ、ただの小娘。 杖を握る手が小さく震える。 「わっはっは、手が震えてるぜ、お嬢ちゃん!」 「ぼ、僕のことは良い、逃げろ、、ルイズ、、」 逃げ出せる訳も無い。 逃げて、どこへ行けというのか。 どこにも逃げ場所など無い、どこにも居場所など在る筈も無い。 魔法の使えぬ貴族なんて、この世界のどこにも。 懐かしい誘惑が心の底からゆっくりと這い出でる。 「絶望」に抗う力などもう残っていなかった。 胸の中に、じくじくと空洞が広がっていく。 そこがどこにつながっているのか、自分は知っている。 自分にはお似合いの場所だ。 世界に存在を許されぬもののたどり着く場所。 『虚無の地平』 「さ、杖をおろしなお嬢ちゃん。 痛かあ、しねえからよ」 警戒しつつも一人の男がじりじりとルイズへにじり寄る。 「、、、、、」 「ああ? なんだって?」 ルイズの小さな呟きに、近づいて居た男がびくりと足を止める。 「、、、エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ、、、」 「お、おい、これ!?」 男が慌てて後ろの仲間を振り返る。 「なーに泣きそうな顔してんだよ!」 「さっき言ってたろ? そいつは魔法を使えねえ! ハッタリだハッタリ!」 後ろでにやけながら野次を飛ばしていた仲間の野盗たちが 突然に息を呑み黙り込む。 「お、おい、どうしたってんだよ?!」 振り返った男の目に映ったのは、 ルイズの左手に掲げられた祈祷書の放つ、淡い光だった。 そのページが風も無くぱらぱらとめくれていく。 「あ? お、、ぐっ、、、!!」 男の足が止まり、額から汗が吹き出る。 それは、先程まで目の前に居た少女ではなかった。 その目は瞳孔を大きく開いて虚空を見据え、その口は朗々と淀みなく詠唱を紡ぐ。 じわり、とにじむように、男の目の前の空間に小さな穴が開く。 光さえも飲み込む、紫電をまとった虚空への穴が。 「、、、オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド、、、」 † 神聖アルビオン共和国首都ロンディニウム、その地下。 蜀台の明かりの揺らめくテーブルの向こうで アーカードはクスクスと小さく笑った。 「ど、どうなされました?」 向かいの席からおびえた声をかけるクロムウェルに応えず アーカードは優しく、嬉しげに、うっとりと微笑んだ。 頬をゆがめ、ぎちりと笑ったその口元から牙がこぼれる。 「っはは、待ちかねた、、 来たぞ、、、虚無の淵から、魔女が来た、、」 † 驚くほどに意識は澄み切っている。 ルイズはやっと理解した。 単純な事だ。 火の系統のメイジは火の力を操る。 水の系統のメイジは水の力を操る。 風は風を。 土は土を。 ならば。 これが己の力。 己の系統。 そして己の運命。 目の前で膨れ上がっていく漆黒の穴を見つめる。 恐れる事はない。 この先は私自身の、いつか還る場所なのだから。 指にはまった水のルビーが熱を帯び、意識をつなげる。 祈祷書の知識が、始祖ブリミルの意思が頭の中に流れ込む。 『虚無』の呪文の初歩の初歩の初歩。 『バニッシュメント(追放)』 「か、頭ぁ、お頭ァ!! 俺ぁ、どうすりゃ?!」 ルイズの目の前でおろおろと立ちすくむ男が 涙目で後ろを向き叫ぶ。 「くっそ、聞いて無ぇぞこんな事ぁ! 構わねえ、そのアマぁ頭がトンでら! 杖をぶんどれ!!」 「で、でも球が! 真っ黒い球が!!」 男とルイズの間に生まれた黒球は、 放電を繰り返しつつオーク鬼の頭ほどにも成長していた。 「剣で払うんだよ! 手首ごと落としちまえ!」 「いかん、ルイズ!!」 「てめえは黙ってろ!」 ワルドを押さえ込んでいる男が上から殴りつける。 「あ、あ、あ、、!」 黒球の前の男はかちかちと歯を鳴らしながら 腰の山刀を抜き放った。 その時。 ============================== 「ルイズ、大丈夫?!」 突然そこに現れたシュレディンガーの姿に野盗たちが固まる。 「シュ、シュレ?!」 ルイズが詠唱を止め、驚きの声を上げる。 そのとたん、ルイズの杖の先に生まれた黒球が 制御を失ったかのようにゆっくりとぶれ始めた。 「え? あ? あわわ」 「こいつも仲間か?! 畜生、畜生!!」 突然現れた亜人の姿にパニックを起こした男が 山刀を振り上げ、シュレシンガーに斬りかかる。 「嫌、危ないシュレ!!」 ルイズが咄嗟に男に杖を向けたその瞬間。 ぱぁんっっ! 破裂音が響き、黒球は消え失せた。 ルイズの目の前で、きょとんとした顔のまま シュレディンガーと男が立ち尽くす。 「え?」 男は何が起こったのかも分らず、辺りを見回す。 あの恐ろしげな魔法の球は何だったのか。 そういえば振り上げた剣がない。 草むらの中に光る何かが落ちている。 「え?」 よく見ればそれは剣先だ。 丸く切り取られたようなつややかな断面を晒した 手のひらほどの金属片が落ちている。 拾おうとして、自分の腕が肩口から 無くなっている事に気付いた。 「え?」 ルイズの前で鮮血を撒き散らしながらくるくると回る その男の肩は、まるで大きなスプーンで すくい取ったかのように丸い断面を晒していた。 「お゛、、あ゛、あ゛、、、」 がたがたと震えながら男が肩を抑えその場にへたり込む。 「ルイズ、大丈夫?」 シュレディンガーが駆け寄り、呆然と立ちつくすルイズの手を取る。 ルイズは、心配げな表情を浮かべたシュレディンガーの瞳に映り込む 血に塗れた女の顔をぼんやりと眺めていた。 (、、誰だろう、怖い顔、、、) 「そん、な、、」 言葉をつまらせる野盗の頭目の後ろで声が響く。 「そこまでだ」 隙を突いて起き上がったワルドの手には、奪い返した杖が握られていた。 「見逃してやる。 あの男を連れて去れ」 額から流れる血をぬぐいながら、片腕を失いうずくまる男を杖で指す。 男を担ぎ逃げ去っていく野党に目もくれずに、 ワルドはルイズの元へと駆け寄った。 「大丈夫かルイズ! すまない、こんな事に、、」 「来ないで!!」 背を向けたままの少女の強い拒絶に、思わずワルドは立ち止まる。 「ご、御免なさい、ちがうんです、、、 でも、私、今の顔、、 ワルド様に、見られたくない、、、」 「そうか、、、 シュレディンガー君、ここはもう良い。 ルイズを、頼む」 ワルドは少女の背中越しにシュレディンガーを見つめる。 少女の使い魔はこくりと頷くと、二人の姿はその場から消え去った。 ============================== 「落ち着いた?」 「うん、ありがと。 もう大丈夫」 自分の部屋にたらいを持ち込んで内風呂をした後、 キャミソールに着替えたルイズはベッドの上に寝転んでいた。 替えのタオルを抱えて来たシュレディンガーは、 そのタオルで湯気を立てるルイズの髪を優しく拭いていく。 「、、、シュレ」 「ん?」 「あのとき、助けに来てくれて、ありがと」 虚無の力に飲み込まれそうになる、あの絶望的な陶酔が ルイズの脳裏に蘇る。 「なーに言ってんのさ、ボクはルイズの使い魔なんだよ。 どんなピンチの時だって、 ボクがルイズを守ってあげるってば」 タオルごと、ルイズの頭を後ろからぎゅっと抱きしめる。 「、、、うん」 自分を抱きしめてくれるシュレディンガーの腕に、 ルイズはそっと自分の手を置いた。 その夜。 シュレディンガーの胸に包まれて。 安らかなその寝息を聞きながら、ルイズは思い返していた。 (私、あの時、、、) シュレディンガーの瞳に映った、血まみれの顔がよみがえる。 思わずルイズは頭から毛布をかぶる。 (、、、笑ってた) † 前ページ次ページ確率世界のヴァリエール
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ラヴァリエール [Lavaliere] 概要 画像: 外見:Necklace 俗称: 入手:SAAF slasher of veils 性能 ヒットポイント変換(物理):20% 回避:+10% マナコスト:-10% 秘薬コスト:-20% 物理抵抗:15% 解説・用途 名前が非常にかっこいいネックレス。 全モンスターの中でもトップクラスの強さを誇るSlasher of Veilsから低確率でしか手に入らない。 そのため非常に希少かつ高価なアイテムである(Slasher of Veils自体、あまり狩りの対象とされないのもあるが・・・)。 しかし物理以外の抵抗値がない上、魅力的なプロパティにも欠けるため実用性はほとんどない。 関連アイテム コメント 名前 コメント
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
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autolink ZM/03-T102 カード名:ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:2 コスト:1 トリガー:1 パワー:8000 ソウル:1 特徴:《魔法》・《虚無》 【永】このカードのバトル中、相手は『助太刀』を手札からプレイできない。 べ、別にね、会いたいからじゃないの、わざわざ行ってあげるだけ! レアリティ:TD illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 トライアルデッキにのみ収録された、運が良いと釘宮さんのサイン入りレアカード。 1コスト能力持ちの割にはパワーが高く、助太刀を無効化するため攻撃時に相手とのサイズ差を読みやすい。 そのため、パンプ後に相手を殴るとほぼ確実に倒せる…と言う点では強い。 とはいえ、封じるのは「助太刀」のみ。カウンターの付いているイベントは使えるので注意が必要。 ・関連ページ 「ルイズ」?
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前ページ次ページ確率世界のヴァリエール 確率世界のヴァリエール - Cats in a Box - 第十四話 前編 (どうしてこうなった) クロムウェルは船の上で考えた。 トリステインの西部、タルブへと向かう戦艦レキシントン号の上で。 運命には抗えない。 指にはまった『アンドバリの指輪』を見つめる。 生者の心を奪い、死者に偽りの命を与えるその力。 こんな物を得て、己は神にでもなったつもりで居たのか。 生者を意のままにし、死者の軍勢を率いるあの少女の形をしたモノ。 あの悪魔に比べれば、私は神どころか陳腐なまがい物でしかなかった。 あれに出会ったその時から、私は運命に捕らえられてしまったのだ。 いや、私自身があの悪魔に魅せられていたのか。 白いスーツに身をまとい、黒髪をなびかせた、あの死の化身に。 † 停戦会談破棄を伝える使者は昨晩、アルビオン王都ロンディニウムを訪れた。 皇太子ウェールズの暗殺から日も変わらぬうちに派遣された特使は 王党派全軍によるロンディニウムへの即時侵攻と、雌雄を決すべしという アルビオン王ジェームズ一世の意思をクロムウェルに伝えてきた。 「あっはっは、良かったのう。 向こうから来てくれるとさ」 ワインを傾けながらアーカードがからからと笑う。 円卓のテーブルの後ろで影がゆらめく。 「笑い事では、、笑い事ではありませぬ!」 クロムウェルが頭をかきむしる。 「ウェールズは「行方不明」になるはずだったのではありませぬか?!」 「予定ってのは狂うためにあるもんだよ?」 アーカードの対面に座った猫耳の少年がやれやれとつぶやく。 「なっ?! そ、それもこれも全部、、、!」 「ひっどいなあ、全部ボクのせいだっていうの?」 シュレディンガーはフォークに刺した鴨のオレンジソースがけを一口頬張ると 目を丸くしてアーカードを見つめた。 「うわ、おいし!」 「ふっふ。 そーじゃろー、そーじゃろー。 あの時はせっかくの手料理を食わせそこなったからの」 「シェフィールド殿!」 クロムウェルがテーブルを叩き、アーカードを睨み付ける。 「これでは、、約束が違います!」 「約束なんぞしとらんのー、単なる計画だ」 手の中のワイングラスがからり、と音を立てる。 グラスの中には始祖の秘宝、『風のルビー』と『水のルビー』が沈んでいる。 「どのみち王党派とは戦わねばならんのだ、大した違いはあるまい。 何より向こうには『虚無の魔女』はもう居らん。 のう?」 グラス越しにシュレディンガーへと笑いかける。 シュレディンガーはぷいとそっぽを向き、口を尖らせる。 「もっちろん! だーれがルイズの元になんか帰ってやるもんか」 「だとさ」 「し、しかし、脅威はいまやそれだけではありませぬ! こちらの計画を知った南のカトリック教徒どもはロサイスへ向かわず その全軍が王党派と歩を合わせ、このロンディニウムへと向かっています! ラ・ロシェールへの奇襲もトリステインに知れているやも知れませぬ! この先、この先どうすれば!」 「どうするもこうするも予定通りに戦争するだけじゃろ、戦争」 辟易としてアーカードが言う。 「こ、この上はシェフィールド殿よりガリアに、、!」 「あ? ウチのひげのおっさんがお前さんに話した計画は 「トリスタニアを攻め落とすに際してはガリア空軍を以ってこれを助ける」 これだけじゃ。 なに、ジェームズ王がこのロンディニウムに向かっておると言う事は ワルドはお前さんの手のものだと思われておると言う事じゃろ。 トリステインの方でもワルドの立てた計画を疑いこそすれ ガリアが噛んどるなんぞ思い付かんだろうし、ラ・ロシェールへの奇襲も 案外うまくいくんじゃないのん?」 「そんな、無責任な!」 「ここの責任者はお前じゃろ? 私はせいぜい高みの見物でもさせてもらおう。 あー、どうせならトリステインの方の戦いにでも行ってみるか。 そっちのが派手そうじゃし、何より魔女殿もおるしの」 黙々と料理を片付けていたシュレディンガーの手が止まる。 「なにアーカード、まだ諦めてなかったの?」 「無論」 短く答える。 アーカードはテーブルの上で手を組み、宙を見つめた。 「のうシュレや、「心を鬼にする」という言葉を お前は知っておるか?」 「ニホンのコトワザだっけ?」 シュレディンガーが眉間にしわを寄せ、昔の記憶をたどる。 「そうだ。 常ならぬ事態に対峙した人間が、常ならぬ決断と決意とを せねばならぬ時に使われる言葉だ」 「そっか。 まあ別に「心を鬼にする」っていっても 鬼みたいな悪いコトをするって意味じゃあないもんね」 「「鬼」は元より「鬼」であるのではない。 「人」が「鬼」に成って果てるのだ。 そして「鬼」とは、人に果たせぬ事を人が果たす為の 人を超えた意思であり、信念であり、執念であると思うのだ。 だからこそ私はそれを欲する、それが欲しい。 それ無くして虚ろなる私は「吸血鬼」足りえず、 単なる「血を吸う何か」でしかない」 「で、ルイズならその鬼みたいな信念を持ってるって? ま、確かに鬼みたいにワガママだしー、 鬼みたいに強情っぱりではあるけどね」 やれやれと猫耳と一緒に肩をすくめる。 「あーそうそう、ルイズといえば」 シュレディンガーがごそごそと服の下を探る。 「こいつは返しとくよ。 まったくとんだ疫病神だ」 よっこいしょと黒い鉄塊をテーブルの上に乗せる。 ガリガリとテーブルを滑ってきた巨大な銃をアーカードが受け止めた。 「ほう、そちらにあったのか」 その銃を感慨深げに手に取る。 「この体だと重心が軽くてな、片方だけではどうもバランスが悪かった」 懐からもう一丁、白銀に輝く同じく巨大な銃を取り出す。 『.454カスール カスタムオート』そして『対化物戦闘用13mm拳銃 ジャッカル』 二丁の銃を軽やかに構え、満足げに頷く。 「ふむ。 矢張りこうでなくてはな」 そのままクロムウェルに向き直ると、アーカードはニヤリと笑った。 「今回は特別じゃ。 加勢してやる」 「そ、それではシェフィールド殿が私をお守りくださるので?!」 「はっはっは、殺すぞ? 上(ロンディニウム)か、下(トリスタニア)かを選べと言うとるんじゃ。 まあ、どうしても私と一緒におりたいのであれば、、、 一番安全な場所に「匿って」やらんでもないがの」 アーカードが牙を剥いて笑う。 乱杭歯の向こうに赤黒い虚無が広がる。 「ヒィッ!」 クロムウェルが思わず悲鳴を漏らす。 「し、しかしトリスタニアを選ぶといってもロサイスまでは、、」 このロンディニウムで王党派とカトリックの挟撃に合うよりは まだしも勝てる見込みはあろう。 ラ・ロシェールを抜けトリスタニアに着きさえすればガリア艦隊の協力がある。 だが、肝心の降下作戦のための戦艦は全てロサイスにあり、 ここロンディニウムとロサイスの間にはカトリックが、あの狂信者集団がいる。 「ほう、前線にあって艦隊指揮をなさると申されるか。 いやいや、まことクロムウェル殿は司令官の鑑よのう!」 二丁の拳銃を懐にしまったアーカードはニコニコと席を立つと、 クロムウェルのえり首をむんずと掴んで有無を言わさず窓際まで引きずる。 「とりゃ!」 そのまま片足で窓を蹴破る。 吹き込んだ夜風になびく髪が、闇を吸い込みゆるゆると変質していく。 「その意気に免じ、この私が直々に送ってやろうぞ」 巨大な翼に姿を変えゆくその黒髪が一度、二度と大きく羽ばたく。 「ではシュレや、ちびっと行ってくる」 そう言うとアーカードは後ろで手を振るシュレディンガーに見送られ、 片手にクロムウェルをブラ下げて鼻歌交じりに月なき夜空へ飛び立った。 「♪ 小さーいー頃ぉ~は~ 神様がいて~、 毎ー日ゆーめを~~、、、」 † そしてそのままロンディニウムへと進軍するカトリック教徒たちの頭上を越えて ロサイスへ届けられ、明くる日の昼にはラ・ロシェールへと向かう艦上に居た。 司令官を迎えた艦隊の意気は上がったが、当のクロムウェル自身は 己の状況を未だに納得できずにいた。 やるべきことは明確だ。 トリステイン領内のタルブに降下、ラ・ロシェールを奇襲して トリステイン艦隊を殲滅し、そのまま王都トリスタニアに攻め上る。 ほかに選択の余地もなかった。 しかし、それでも。 いや、だからこそ。 運命には抗えない。 思えばこのレキシントン号も、あの『虚無の魔女』が一番最初に関わった船だった。 ようやく修復を終えたその艦上に自分がいる事に、深い因縁を感じざるを得ない。 クロムウェルは自分の指にはまった『アンドバリの指輪』をもう一度見つめ、 そして力なく笑った。 。。 ゚○゚ 「どうしたもんですかネー」 イスカリオテ機関長、間久部(マクベ)が髪をかきあげる。 その口調とは裏腹に、垂れた髪の奥の目は笑みに歪んでいた。 皇太子暗殺から一夜明けた正午。 サウスゴータとロンディニウムの中ほどにある森のそば。 「アルビオン解放戦線」から名を改めた「ハルケギニアカトリック武装蜂起軍」は ロンディニウムへの夜を徹した強行軍の中、しばしの小休止を取っていた。 アルビオンの民衆は長きに渡る内乱に倦み疲れ、その争いに大義名分を与える ものでしかないブリミル教とメイジ達への反感を火薬の如くに蓄積させていた。 そんな彼らの中にカトリックの教義は熱狂を以って迎えられ、今やその信徒は 十万にならんとし、蜂起軍の数も様々な勢力を併呑しつつ優に三万を超えていた。 その象徴である二人の聖女、その一人のティファニアは行軍に加わらず 信仰の中心地となったウエストウッド村に残り、信徒達をまとめている。 ハーフエルフである彼女は新たに信仰に加わる者たちへ例外なく驚きを与え 時には一時の警戒を招きもしたが、エルフを敵と教えた貴族たちへの反発と 何より誠実で献身的な彼女の姿がかえって信徒達の求心力となっていった。 そしてもう一方の聖女、『狂戦士(バーサーカー)』高木由美江は その圧倒的な戦闘力により武装蜂起軍を団結させる強力なイコンとなっていた。 特にその愛剣(その様な言われ方は由美江にとっては不本意だったが)である デルフリンガーの魔法殺しの能力は、メイジたちに使い捨てられてきた 魔法を使えぬ平民兵士達にとって、まさに貴族支配打倒の象徴と映った。 軍の中でも特に信仰心と戦闘力の高い者たちは『ウエストウッド聖堂騎士団』 として彼女に直接指揮をされ、その十字を掲げた黒ずくめのいでたちは 戦場にあってレコン・キスタ側の兵士達に強烈な畏怖を植えつけた。 その高木由美江は間久部機関長の傍らでもう一人の人格に体を預け、 自分は来るべき戦いに備えて眠りについていた。 「ど、どうかなさったんですか? 機関長」 「いやナニ由美江クン、あ、いや今は由美子クンか。 どーにもこーにも目指すロンディニウムから 当のクロムウェル氏の姿が消えたらしいんデスヨネー」 「そ、それって、レコン・キスタの方々との和平交渉のお相手が いなくなった、ということでしょうか?」 「ワヘイ、デスかぁーっはっはぁ」 この期に及んでそんな発想が出てくる由美子の平和主義ップリに 間久部は思わずがっくりと頭を垂れる。 二重人格とは聞いてはいたものの、これほどまでとは。 この世界にちょくちょくと顔を出すようになって数ヶ月がたつが 未だに由美江と由美子の二人のギャップに慣れる事は出来ない。 (ま、この由美子クンがいればこそ、由美江クンもあのおっとりとした ティファニア嬢と上手くやっていく事が出来ているんだろうがネェー) 「フン、レコン・キスタの司令官が敵前逃亡とは、何ともしまりのない結末だ。 この分では俺の働き甲斐も無さそうだな」 二人の横で黙々と愛銃ソードオフ・M1ガーランドの手入れをしていた ルーク・ヴァレンタインが間久部の顔も見ずに鼻で笑う。 初夏だというのに白のスーツに白いコート、流れるような金髪を 後ろに束ねたその姿は、身にまとった常人ならざる気配と相まって 寄せ集めの軍勢の中でもひときわ異彩を放っていた。 個人での陽動や暗殺を主な任務とするルークは前線での戦闘には 殆ど関わらず、吸血鬼であるという事も知らされてはいなかったが、 影に日向にティファニアを見守り、隙さえあれば由美江と殺し合いを 始めようとするこの色白眼鏡の美男子が人外の存在だろうという事は 信徒達の間では暗黙の了解となっていた。 「それはあの、良い事です、、よね? ルークさん」 由美子相手では食指も動かぬらしく、ルークはただ肩をすくめる。 「いやいやソーとは限らりませんよー、ミスタ・ヴァレンタイン。 向こうにはかのアーカード氏がいるらしいじゃあないデスかあ?」 間久部の発したその名前にルークの手が止まる。 「その「ミスタ」ってのは止せ、ケツが痒くなる。 アーカードは確かに問題だが、シュレディンガーの話だと そもそも向こうに加勢するとは限らん。 大体ヤツとて身一つでこの世界に来てまだ日も浅い、 アレの死の河とて良くて一万になるならぬの筈。 ロンディニウムの貴族派残存兵力を足しても 王党派と合わせればこちらの方が数は倍する。 それに、アーカードがその領民達を戦場に解放したその時は、、、 今度こそ、俺がヤツの心臓を止めてやるさ」 眼鏡の奥で理性を保っていた真紅の瞳が、凶暴な歓喜に歪んだ。 † 「起きて下さい」 かつてこの国の王城だったハヴィランド宮殿。 クロムウェルをロサイスに送り届けたアーカードは、 ロンディニウムに戻るとその宮殿上部の寝室で たっぷりと食らい、たっぷりと眠った。 その食い散らかした残骸の中に、ローブをまとった女性が立っている。 その目は吸血鬼特有の赤い光を放っていた。 「シェフィールド様、起きて下さい。 面白いことになっていますよ」 眠りに落ちていたアーカードが鼻をひくりと動かし、目を覚ます。 丸一日以上眠っていたらしい。 ひとつ伸びをしてぺたぺたと窓辺に進み、カーテンを引き開ける。 雲間に隠れた天頂の太陽の近くに、二つの月が浮かんでいる。 日食が、近い。 視線を水平に移してから、アーカードは初めてそれに気づいた。 「ほお!!」 ロンディニウムを囲む城壁のそばに、二隻の戦艦の姿がある。 戦艦はゆっくりと回頭し、その砲列を今まさにハヴィランド宮殿に 向けつつあった。 城壁の外では既に展開された両軍が開戦の時を待っている。 「あんな隠し玉があったとはのう!」 貴族派の空軍戦力はほぼ全てがトリステイン攻略へと向かっている。 王都防衛の竜騎兵部隊が次々と飛び立っていくが、司令官の不在は 指揮系統に混乱を招き、兵達は統率された行動を取り得ずにいる。 「はは、いいぞ」 二隻の戦艦から一斉に砲火が上がる。 「 戦 争 の 時 間 だ 」 着弾の轟音と衝撃とがハヴィランド宮殿を揺さぶった。 地上でも砲撃を契機に双方の軍勢が敵陣へと突撃を開始していた。 鬨の声と剣戟とが遠くここまで響いてくる。 まるで宝物を見つけた子供の様に、アーカードの目が歓喜に輝く。 懐へ手を差し入れると、ローブの女性へ指輪を放る。 始祖の秘宝、『風のルビー』と『水のルビー』。 今のアーカードにとっては限りなくどうでもいいものだ。 「クロムウェルの方はどうなりましょうか」 「知らん」 眼下に繰り広げられる光景を見つめたまま、アーカードが短く答える。 「大体クロムウェルが首尾よくトリスタニアまで辿り着いたとして、 あのおっさんが「自分の娘」が留学しとる国を攻撃するとも思えん」 「シャルロット様、ですか」 「今はタバサと名乗っとったよ。 向こうはぜんぜん覚えておらんかったがの。 もっとも、国元でこの姿で会った事は無かったか」 アーカードは手を広げ、少女の形をした自分自身の体を眺める。 「シェフィールド様は、どうなさるので?」 「その「シェフィールド」という名前は、お前にやる」 後ろに立つ女性が小さくため息をつく。 「では、今後は何とお呼びすれば」 「アーカード」 振り返りもせず、ぎちりと頬を引き上げて答える。 「いろいろ試したい事もあったからな。 ちと遊んで帰る、と 「シャルル」 に言っておけ」 アーカードは窓を蹴破ると血と硝煙と鉄の臭いを大きく吸い込み、 歓喜の大哄笑を上げて戦火の空へ身を躍らせた。 † 「敵陣は混乱の極みだ! 次弾、砲撃準備急げよ!」 「敵竜騎兵を近づけるな! 左舷弾幕を厚くしろ!」 王党派が隠し持っていた虎の子の戦艦二隻。 甲板を怒声が飛び交い、兵士達が慌ただしく駆け回る。 その一隻、戦艦レパルス号の甲板―――。 一人の兵士が、ぞくり、と氷の様な気配を感じ思わず後ろを振り向く。 視線の先には同じく息を呑み甲板の中央を見つめる仲間の姿があった。 爆音とどろく戦場の中で、その場にいた全員が無言で一点を見つめる。 そしてそれは当然のように、空からゆっくりとそこに降り立った。 兵士は、ある「噂」を思い出していた。 その噂はこの内乱が始まった時から、否、もしかしたらそれ以前から 兵士達の間に囁かれていたものだった。 それは、真白い少女の姿かたちをして戦場に現れ、 けれど、少女では、ましてや人などでは在り得ず、 しかし、敵味方の区別無く。 いわく――― ―――血を啜るという。 いわく――― ―――魂を喰らうという。 聞いた時には馬鹿げた与太話だと一笑に付した。 事実、そんな話など聞いた端から忘れていた。 今、その与太話の「それ」が眼前の「これ」だと瞬時に理解した。 自分だけでない、ここにいる皆が感じている。 「恐ろしい事になる」と。 この化け物を倒してしまわないと「恐ろしい事になる」と。 少女の姿をした「それ」に、全員が殺到した。 銃弾が、魔法が、剣が槍が斧が次々とその五体に撃ち込まれ、 焼き焦がし、斬り刻み、「それ」を肉片へと変えていく。 艦外の戦闘は忘れ去られ、絶叫と恐慌だけがその場を支配した。 だが。 撃ち尽くし、焼き尽くし、斬り尽くした時、 絶叫は絶句に置き換わり、恐慌は絶望に浸食されていく。 声なく立ち尽くす兵士達の前で、その肉片が、骨片が、服さえもが 溶けて流れて赤黒い血流に変わり、蛇の様に渦巻いて人の姿を形取る。 真白いスーツに黒髪をなびかせた少女の姿を。 復元したばかりの口元から小さなピンク色の舌がこぼれ、唇を舐める。 少女はまだ鼻から上の無い顔で、ゆったりと皆に微笑む。 真白い手袋をした両手が懐に差し込まれ、巨大な二丁の拳銃を取り出す。 左手には白金の銃、右手には黒金の銃。 アーカードは両手を広げ喜びに満ちた表情を浮かべると、 出来上ったばかりの目を見開き満足げに周囲を睥睨した。 「兵士諸君 任務御苦労 さ よ う な ら 」 ただただ一方的な虐殺の場と化した戦艦レパルスの横で、 戦艦オライオン号の甲板上へもその恐慌は感染しつつあった。 「何が、何が起こっている、あの艦上で、、」 「判らん! くそっ、とにかく陛下をお守りしろ!」 「何だ? レパルスの黒いあれは何だ?!」 ―――得体の知れない何かがレパルスの艦内を蹂躙している。 「あれをオライオンに近づけるな!」 ―――それだけはオライオンの艦上からも見て取れた。 「駄目です、レパルス号の通信途絶!」 「陛下、こちらは危険です!」 国王ジェームズ一世は、しかし動こうとはしなかった。 「いまさらこの場を逃れて何になろう」 確証は無かった。 しかし心静かに確信していた。 (あれが、朕の死であるか) 老王はゆっくりと手にした王杖を振り上げ、 戦艦レパルスへ向かってかざす。 傍らに立った司令官が驚きながらも兵に指示を出した。 「?! ほ、砲撃用意! 目標、戦艦レパルス号!!」 その声に兵士達も一瞬の放心の後、すぐに指示を実行する。 「取り舵いっぱい!」 「急げ! 全砲門開け!」 「、、、陛下」 その声にジェームズ一世は静かにうなずく。 王杖が振り下ろされ、司令官が叫んだ。 「撃て!!」 「全弾命中! 全弾命中!」 味方艦への打撃に悲痛な歓声が艦内に湧き上がる。 しかしそれはほどなく、困惑と畏怖とに変わっていった。 オライオン艦上の全兵士が見守る中、 黒煙を上げる戦艦レパルスは ずるずると這い蠢く赤黒い巨大な何かに包まれていく。 「、、、冗談だろ」 「次弾装填急げ、、、早く、早く!!」 もはやそれ自体が赤黒い何かに変質しようとしているレパルスが、 低い軋みを上げつつゆっくりとその船首をオライオンへと向けた。 「?! こちらにぶつける気か!」 「退避!退避!」「駄目です、間に合いません!」 「魔法だ! 何でも良い、魔法を奴に、、、!!」 狂乱の坩堝となったオライオン艦上で。 かつて戦艦レパルス号だったモノが眼前に迫る中、 アルビオン王国国王ジェームズ一世はその人生の最後につぶやいた。 「、、、ウェールズ、すまんな」 遠く響く轟音と爆炎とがロンディニウムの天空を揺るがせた。 † 「オイオイオイ、どうなってんのよアレは?!」 向かってくる敵の首を右手の日本刀で刎ねつつ、由美江は ゆっくりと墜落していく友軍の残骸を唖然として見上げる。 「どうも何も、誰の仕業かなんぞ判り切ったことだろう?」 ルークが鼻で笑いつつ、顔も向けずに後ろの敵の頭を射抜く。 ついでに横なぎに振るわれた日本刀の一撃を 造作も無くしゃがんでかわす。 「お前の半分がテファの親友である事に感謝するんだな。 でなければ今すぐ蜂の巣にしてやっている所だ」 銃口を由美江に向けたまま斬りかかってきた敵兵を蹴り飛ばす。 「はンっ! やってみろっつーのよこのへっぽこフリークス!」 蹴り飛ばされてきた敵兵を左の剣で叩き潰すと、由美江は周囲を見渡す。 『おい相棒、俺ぁ金槌じゃあねーんだぜ? せめて斬れよ』 悲しげにつぶやくインテリジェンスソードには目もくれない。 「集まれ!」 由美江の号令に百人程の黒ずくめの集団が周囲に陣を張る。 ハルケギニアカトリック武装蜂起軍の中でも選りすぐりの 狂信者集団、『ウエストウッド聖堂騎士団』。 十字を掲げた彼ら全員が、由美江の刀が指し示すその先を見つめる。 「敵陣に落ちますな、シスター」「件の吸血鬼と言えど、あれでは」 ―――私は ヘルメスの鳥――― 「否、来るわ」 ゆっくりと土柱を立ち上らせ敵陣へと吸い込まれていく 巨大な二つの塊を眼光鋭く睨みつつ、由美江が答える。 ―――私は自らの 羽を喰らい――― 「さて、仕事だ。 せいぜい囮になる事だな」 ルークの足元から黒犬獣がせり上がり、彼自身を飲み込むと そのまま影の中にどぷりと消え去る。 ―――飼い 慣らされる――― 「黒禍が、来る!!」 二隻の戦艦が敵陣に墜落したその衝撃が、数瞬の間をおいて 由美江たちに叩きつけられる。 大地を揺さぶる振動と、吹き付けられる熱風と粉塵の中で 由美江は知らず笑みを浮かべていた。 「河が来る、死の河が。 地獄が踊り、死人が歌う」 墜落の衝撃だけが理由ではなかった。 襲い来る猛烈な予兆、いや狂兆に心と体を絡め取られ 敵も味方もその動きを止めていた。 黒煙と炎に包まれた残骸の中から、何かがあふれ出た。 赤黒いそのそれは、奔流となり、濁流となり、 そして激流となって周りの全てを飲み込んでいく。 そしてその中から、『死の河』の中から。 死者の、群れが。 現れたそれは、騎兵だった。 それは歩兵だった。 それは工兵だった。 それは竜騎兵だった。 ドットメイジが、ラインメイジが、トライアングルメイジが、 スクウェアメイジが、神官が、平民が、貴族が、商人が、 猟師が、農民が、遊牧民が、トリステイン人が、ガリア人が、 ロマリア人が、アルビオン人が、ゲルマニア人が、東方人が、 傭兵が陸戦兵が砲兵が水兵が憲兵が砲亀兵が火のメイジが 風のメイジが土のメイジが水のメイジが衛士が銃士が聖堂騎士が 風竜が火竜がオーク鬼がトロル鬼がオグル鬼がコボルド鬼が ミノタウロスがエルフが、呼ぶべき名も無きものたちが―――。 死者の王の領民たちが、その領地から這い出でた。 「全周防御!! 全周防御!!」 「方陣だ!! 方陣を組め!!」 「何だ!! 何が、、、」 「何が起きている?!」 恐怖に駆られた生者が叫ぶ。 まもなく死者の側へと転じる者達が。 「死だ、、、」 由美江が言葉を噛み締める。 「死が、起きている、、、!!」 怖がる事は無い、恐れる事は無い! 自らもかつて、「これ」の一部だったのだ。 左手のルーンが唸りを上げて輝きを増す。 「いいなあ!! あれ!!」 遠くの丘から双眼鏡で戦局を眺めていた間久部が喜色満面に叫ぶ。 「欲しい!! 素晴らしい!!」 戦艦の残骸を押しのけ現れた巨大な皮膜がロンディニウムの空を覆う。 めりめりと広がるその翼は生者も死者をも暗闇の中に塞ぎこめ、 ゆっくりと伸び上がるその首は二つの月をも喰らわんとする。 小山の如きその巨躯が死の河の内から顕現した時、ハヴィランド宮殿の 屋根の上でルークは引きつった笑みを抑えられずにいた。 体長100メイルを優に超える、歳振りし火竜が大気を震わせ咆哮する。 「あんなものまで、、あんなものまで喰ったのか!」 古竜の巨体がロンディニウムの城壁を難なく打ち砕く。 死の河は既に城壁を超え、市内へと雪崩れ込んでいる。 それはもはや、戦争といえるものではなかった。 敵も味方も、平民も貴族も、武器持つ者も持たぬ者も、 生きとし生けるもの全てが有象無象の区別無く。 「こんな事があるものか! あってたまるか!!」 どう考えても多すぎる。 死者の群れは溢れ留まる事を知らず、今や郊外の戦場はもとより ロンディニウム全域をすら飲み込まんとしている。 少なく見積もっても優に30万は下るまい。 奴とてこちらの世界へ来てまだ数ヶ月のはずなのだ。 古竜が大きく息を吸い、巨大な火球を吐き出す。 否。 こちらの三人がたまたま同時期に召喚されただけ、だとするならば。 アーカードまでもが時期を同じくする必然性は無い、とするならば。 有象無象が塵芥と吹き飛ばされ、立ち昇る火柱は天をも焦がす。 その光景を見下ろすルークの脳裏にシュレディンガーの声が蘇った。 この世界での再開以来、あの猫は事ある毎にウエストウッドを訪れては 昼食をご馳走になる代わりにティファニアに茶飲み話を披露していった。 そうだ、自分と主人とが平行世界に迷い込んだという話だった。 他愛ない冒険譚の中で、シュレディンガーは何を語っていた? 使い魔たちが召喚された時を分岐に、平行世界の相違が生まれていた、と。 けれど一部の相違は、自分達が召喚される前から在るようだった、と。 だが、それさえも他の使い魔が召喚された時に生じた相違だったとすれば。 そう、アーカードがこの世界に召喚された時に生じた相違だったとしたら。 もし、そうだとしたら。 5年か? 10年か? それとももっとか。 「奴は、、奴は何時から ここ<ハルケギニア> にいる!?」 † 燃え盛り黒煙を上げる、墜落した戦艦の残骸の上。 アーカードはそこに座り、足を組んで嬉しげに遠くを見やる。 「存外に粘る! ふふ、そうでなくてはな、そうであろうとも!」 混沌の中央、死者と生者との狭間には由美江率いる黒衣の集団、 『ウエストウッド聖堂騎士団』が陣取り、防波堤となっていた。 「さて」 瓦礫の上に立ち上がると、両手の銃を指揮棒のように構える。 アーカードの足元、瓦礫の丘の下に死の河が沸き立つと、 数十、数百の杖持つ影が次々と立ち現れる。 新たに現れた死者の群れは一斉に様々な形の杖を掲げ、 しかし一糸乱れぬ統率で朗々とルーンの詠唱を始めた。 「単一意思に支配された千人のメイジによる同時詠唱。 さしずめ 千角形<キリアゴン> スペル とでも名付けるか」 最初に反応したのは水系統のメイジ達だった。 前線のはるか後方に現れた尋常ならざる死者の群れ。 彼らの唱えるルーンが何をなそうとするものなのかに気付いた時、 この魔女鍋の底のような混沌のさ中で、いよいよ己の気が触れた のではないかと我を疑った。 しかし数瞬の戸惑いの後、彼らは声の限りに絶叫した。 「奴らを、奴等を止めろ!!」 「いや、もう遅い! 何処でも良い、身を隠せ!!」 そこには既に王党派も貴族派も無かった。 死者と、死から逃れんとする者とがいるだけだった。 「土のメイジはトーチカを作れ!」 「平民を守れ! 早く!!」 戦場の中央に大気が凝り、渦を巻く。 空を覆わんばかりの雲塊が現れつつあった。 高らかな死者たちの詠唱に合わせて、 遥かな高みの白い渦は放電を伴って凝集されてゆく。 そしてその収縮が頂点に達したとき。 「来るぞ!!」 絶叫とともに戦場に高温の暴風が吹き荒れた。 逃げ損ねた者の皮膚がただれ、膨れ上がり、 生きながら蒸し焼きになっていく。 「頭を出すな! 息を吸うな!」 ある者は城壁の瓦礫に、ある者は同胞の死体に埋もれ 必死に灼熱の突風をやり過ごす。 「終わった、のか?」 「いや、、今の熱風は氷結魔法の副産物だ。 単なる放熱現象に過ぎん」 その単なる副産物に焼かれた者たちが累々と転がる。 風のやんだ戦場で、男たちはゆっくりと立ち上がった。 「あれ、見ろよ」 促され、空を仰ぎ見る。 まもなく食に入ろうとする太陽と二つの月の横に。 三つ目の月が生まれていた。 水晶を削りだして造られたかの様なその天上の球体は、 距離感も判らぬ程の彼方で陽光を浴びて煌いた。 「何て、、何て美しい、、、」 知らず、涙が溢れてくる。 その月が高く澄んだ音を響かせ、ひび割れる。 生まれたばかりの月から光のしずくがゆっくりと漏れ落ちてくる。 こぼれ出たその光の一つを受け止めようと、男はそっと手を伸ばした。 全ての音が消えた世界に、アーカードの声が鳴る。 「では逝くぞ。 千角形<キリアゴン>スペル エ タ ー ナ ル フ ォ ー ス ブ リ ザ ー ド 」 月からの光のしずくが長さ5メイルを超える氷柱だと気付いた時、 男の体は既に氷柱に貫かれ、否、押し潰されていた。 地獄が、降り注いだ。 † 「おお、遅かったのう」 「おまえは、、、おまえは一体何なんだ」 舞い落ちる氷柱群が奏でる荘厳な交響楽曲を背に、アーカードは振り返る。 二つの月がゆっくりと太陽を飲み込んでいく。 闇が世界を飲み込んでいく。 「どうした? 千載一遇、万に一つ、那由他の彼方の好機だろうに」 「化け物め!」 ルーク・ヴァレンタインが牙を噛み鳴らす。 「『あの方』を騙るな! 俺が死の河と分かたれるまで、『あの方』は共に死の河に在った。 お前は『あの方』じゃあ無い。 お前はアーカードでも無い。 お前は吸血鬼ですら無い。 お前を滅ぼす好機だと? 笑わせるな。 お前は死すら持たない。 お前は賭すべき何物も持ってはいない。 お前は、お前はただ人を真似るだけの人もどきに過ぎん!」 アーカードは悲しげに肩をすくめる。 「やれやれ、非道い言われようじゃのう」 周囲に渦巻く阿鼻と叫喚の混声合唱はいつしか途絶え、 曲目はついに終盤を迎えていた。 闇に包まれた白銀の世界から、赤黒いものがにじみ出て来る。 幾千幾万の魂が、命が、そして死が。 小さな体が黒髪と、血と、影と溶け合い闇そのものへ変じる。 死の河が再び眼前の少女の内へと帰ってゆく。 もはやルークになす術は無い。 目の前に在るのは死の河の主ではない。 主を求め彷徨う死の河そのものなのだ。 「ならばこそ、、、 命を賭して何かを成すために、私は命が欲しい。 死を恐れず何かを成すために、私は死が欲しいのだ。 お前ならば、分かれ。 ルーク・ヴァレンタイン」 死の河の中央で全ての滅びを飲み込んでゆく少女は ルークをただ正面から、静かに見つめていた。 その静かな眼差しはしかし、哀願の、懇願のようだった。 死ぬ為だけに死を望む死の化身。 その時、その瞳が、ふいに固まり大きく見開かれた。 その顔が、弾かれたように東の空に向けられた。 「、、、来た」 少女の声は歓喜に打ち震えている。 「は は は は は は ! ! 開く、、、 『虚無』が開くぞ!!」 哄笑とも咆哮ともつかぬ狂喜の声をあげ、黒い翼を天に伸ばす。 「ワンコはもう少しだけ貸しておいてやる」 にやりと笑った後、引き絞られた弓矢のように暗い空に飛び去っていく アーカードの姿を、ルークはただ立ち尽くして見送った。 † 由美江が目覚めた時、生者も死者も、そこに何も残されてはいなかった。 戦場にはただ一人、自分だけがとり残されていた。 デルフリンガーの力を以ってしても、それが限界だった。 皆を守ろうとして守れず、力を使い果たし倒れた自分の上に覆いかぶさり 微笑みながら凍り付いていった男達の顔を思い出す。 (御然らばですシスター、いずれ辺獄<リンボ>で) その顔が今、白く変わり果てて由美江を囲んでいた。 日食は終わっていた。 由美江は自分を庇い氷像と化した同胞達の下から這い出し、 見渡す限り墓標のように乱立した氷柱群を眺める。 低く煙るもやの向こうには、輝く廃墟と化したハヴィランド宮殿が見える。 恐るべき力で周囲の全てを侵食していた凍結の力は失われ、 あちこちで氷柱が音を立てて崩れだしていた。 惨劇を覆い隠すように、白銀が陽光を受けてきらめく。 抑えきれぬ衝動が、体のうちに激しく渦を巻いてゆく。 氷原の中で、左手のルーンの熱さだけが空しくその身を焦がす。 由美江は虚空に絶叫した。 「殺す、、、 殺して殺(や)るぞ、 ア ー カ ー ド ! ! !」 † 前ページ次ページ確率世界のヴァリエール
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【マスター】 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 【令呪】 左手の甲。 ガンダールブのルーンに近似する。 【マスターとしての願い】 魔法の習得。 ただし今のところそれを聖杯に願うつもりはない。 【weapon】 杖 魔術行使のための霊装。 【能力・技能】 虚無の魔術 始祖ブリミルのみが行使したという失われた魔術形態。 地水火風の四属性いずれにも当てはまらないもののうち、人間が行使する魔術の多くをルイズの世界、ハルケギニアではそう呼ぶ。 空間転移、記憶操作、幻術、解呪、固有時加速など多彩な術がある。 しかし現時点のルイズは自らがこの使い手であることは自覚しておらず、術式の一切を行使できない。 僅かに『エクスプロージョン』の片鱗を暴走のように発動させるのみ。 それでも始祖直系の6000年続く魔術師の家系であり、優れた魔術回路を持つ。 特に強い感情によって励起する回路で、何もなくとも1日あればかなり回復するが、怒りや嫉妬などの負の感情を覚えると魔力を一気に生成できる。 【人物背景】 6000年前にハルケギニア式とでも呼べる魔術方式を編み出した魔術師、始祖ブリミルの子孫、ラ・ヴァリエール公爵家の三女として生を受ける。 父母も二人の姉も優秀な魔術師にして堂々たる貴族であり、ルイズも気高い精神と豊富な知識を持つ。 魔術学院において座学や理論においては優秀な成績を示すのだが、実践だけはうまくいかず、なぜかどんな術を行使しても爆発を引き起こしてしまう。 幼少期からそれは続き、魔術のできない「ゼロ」のルイズと蔑まれ、劣等感に苛まれる人生を16年送ってきた。 最後の希望として使い魔召喚の儀に臨んだ瞬間の参戦。 本来の時間軸においては使い魔の召喚に成功し、様々な経験を経て人間的に成長。 後にハルケギニアの多くの魔術師とは扱う術式が根本から異なるために魔術行使ができなかったことが発覚。 国でも有数の魔術師として目覚める。 長年のコンプレックスと貴族としての誇り高さが相まって若干面倒な性格。 特に宿敵のツェルプストー家の人間や、平民(魔法を使えないもの)、大切なものを奪おうとするもの(恋敵など)にはかなりきつく当たるところがある。 とはいえ根本にあるのは名門貴族の娘らしく、「貴族は平民(力のないもの)を守らなければならない」、「守るためには魔術という力が必要である」というノブレス・オブリージュからくるところが大きい、齢16にして立派な貴族である。 【方針】 なのはに師事し、魔術を学ぶ。
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かわいい 萌 ちょっと、そこの馬鹿犬 ちゃんと書かないとはいい度胸ね ルイズw CV釘宮 ライトノベル【ゼロの使い魔】のメインヒロイン。桃色がかったブロンドの長髪と鳶色の瞳を持つ、ヴァリエール家の三女で16歳。身長153サント、スリーサイズはB76/W53/H75と小柄で細身の為、スタイルの良い同性に対してコンプレックスがある。また、細身なのにも関わらず腕っ節が強い。 トリステイン屈指の名門貴族であるヴァリエール公爵家(始祖は王の庶子)に生まれ、トリステイン魔法学院に進学する。学院の進級時、使い魔召喚の儀式で地球人の才人を召喚してしまい、彼を使い魔とする羽目になった。「ゼロのルイズ」の蔑称は、幼少の時から魔法に失敗し続けたため、魔法の才能が皆無であるとされたことから付けられた。だが魔法が使えなかったのは、四系統のメイジとは異なる系統の使い手だったせいであり、幾つかの事件によって「水のルビー」と「始祖の祈祷書」を手にしたことから、「虚無」の魔法に目覚める。彼女の虚無は、ロマリアの教皇ヴィットーリオによると“攻撃”を司るもので、第17巻時点で使える魔法は「爆発(エクスプロージョン)」「解呪(ディスペル)」「幻影(イリュージョン)」「瞬間移動(テレポーテーション)」。強力な破壊力と威力を持つ一方、初歩の魔法でさえすぐに精神力が尽きるほど消耗が激しい。虚無に目覚めた後は、簡単なコモンマジックは使えるようになっている。 可愛らしい外見とは裏腹に、気位とプライドは非常に高い上、短気で癇癪持ちで気難し屋という厄介極まりない性格。また泣き虫という子供っぽい一面も見せる。出来の良い姉たちの存在や、魔法を使えないなどの理由から両親から全く期待されていなかったと思い込み、強いコンプレックスを抱いていた。そのため、他人に認められたいと思うあまり、物語開始当初は無茶をすることが多かった。第6巻では家族の反対を押し切ってアルビオン討伐の遠征軍に参加してもいる。しかし、その後は無茶をするのも貴族としてのプライドよりも仲間のためを理由にするようになりつつあり、第10巻ではアンリエッタに貴族の身分を返上し、ガリア王国へタバサを救出に向かった。第11巻でのトリステイン帰国後、タバサを救出したことにより、アンリエッタの義理の姉妹となり第2の王位継承権を得ている。 最初は才人のこともただの使い魔としか見ていなかったが、共に戦い続けて行く中で少しずつ惹かれていき、彼のことを1人の異性として強く意識するようになっていく。ただし独占欲と嫉妬心が強いため、才人が自分を馬鹿にしたり、他の女性と仲良くしたりするとキツイ罰を与えることから、才人には「こんな女と結婚したら大変だ」と思われている。現在では才人に依存している面が目立ち、才人に「自分がいなくなったら死んでしまうのではないか」と思われてしまうほどである[1]。第13・14巻で、才人が母親からのメールに涙を流しているのを見て「才人のために何かしてあげたことがあっただろうか」という思いに駆られ、「アクイレイアの聖女」になることの対価に、ヴィットーリオに世界扉を開かせて才人を地球に帰すことを決意したが、結局才人は帰郷しなかった。第16巻で屋敷の地下室で密会した才人とアンリエッタを偶然目撃し、自分が消えればみんな幸せになれると思い、家出した。第17巻後半で才人と合流し、元素の兄弟の次男を雑魚扱いするほどになった。。 好きな食べ物はクックベリーパイ[2]。趣味は編み物だが、かなり下手。特技は乗馬。嫌いなものはカエル。アンリエッタの幼少時の遊び相手で、彼女が女王となった今でも友人として想われている。しかし、ルイズはアンリエッタがいつも自分の人形を借りてはすぐに飽きるのを根に持っていたことが第17巻で明かされている。才人に「姫様は飽き性だからすぐに捨てられる」と言って、アンリエッタと喧嘩になった。キュルケとは顔を付き合わせれば憎まれ口を叩きあうが、陰湿な要素は無く、悪友とも言える関係である。 作者のあとがきによれば、『ダルタニャン物語』にも登場する実在の人物、ルイーズ・ド・ラヴァリエールをモデルにしており、片足が不自由という身体的ハンディキャップを負いながらも誇りを持って己の生き方を貫く、その姿勢を見習っている。 ――――引用 wikipedia ゼロの使い魔の登場人物 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールより ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ!ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! 小説11巻のルイズたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!! アニメ2期決まって良かったねルイズたん!あぁあああああ!かわいい!ルイズたん!かわいい!あっああぁああ! コミック2巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら… ル イ ズ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ハルケギニアぁああああ!! この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のルイズちゃんが僕を見てる? 表紙絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!ルイズちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!! アニメのルイズちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはルイズちゃんがいる!!やったよケティ!!ひとりでできるもん!!! あ、コミックのルイズちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!! あっあんああっああんあアン様ぁあ!!セ、セイバー!!シャナぁああああああ!!!ヴィルヘルミナぁあああ!! ううっうぅうう!!俺の想いよルイズへ届け!!ハルケギニアのルイズへ届け!
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール〔るいず・ふらんそわーず・る・ぶらん・ど・ら・う゛ぁりえーる〕 作品名:ゼロの使い魔 作者名:[[]] 投稿日:年月日 画像情報:640×480px サイズ:21,119 byte ジャンル:釘宮理恵 キャラ情報 このぐぬコラについて コメント 名前 コメント 登録タグ ゼロの使い魔 個別る 釘宮理恵
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ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール〔るいず・ふらんそわーず・る・ぶらん・ど・ら・う゛ぁりえーる〕 作品名:ゼロの使い魔 作者名:[[]] 投稿日:年月日 画像情報:500×375px サイズ:30,525 byte ジャンル:基本サイズ外,釘宮理恵 キャラ情報 このぐぬコラについて コメント 名前 コメント 登録タグ ゼロの使い魔 個別る 基本サイズ外 釘宮理恵